6年生になると、「分数×分数」「分数÷分数」を学びます。「分数×分数」はそのまま分母どうしと分子どうしをかける、「分数÷分数」はわる数の逆数をかける、と知っている人は多いはずです。
ただ、どうして「分数÷分数」はわる数の逆数をかけるのでしょうか。わる数の逆数をかける理由を説明できますか。
学校の先生でも、うまく説明できない人が多い内容です。この内容は、計算する上では特に大切というわけではありませんが、「分数÷分数」の意味を知る上で参考にしてほしい内容です。
学ぶこと
6年算数の「分数÷分数」では、「わる数の逆数をかけて計算する」ということを使い計算ができれば大丈夫ですが、どうしてわる数の逆数をかけるのか以下の問題で確かめてみましょう。

図(面積図)を用いる
分数ではもとになる数が大切で、ここでは1㎡です。1㎡が分母を決定することになります。

1/3dLのペンキでは、1㎡のかべの3/5㎡をぬることができるので、図(面積図)を3/5ぬります。

ここまでは等分するだけですので大丈夫だと思いますが、子どもたちの多くは次で少し混乱します。それは、「3/5㎡を1/3dLでぬっている」という部分です。
「3/5㎡を1/3dLでぬっている」ので、面積図の下に1/3dLが入ります。

ここまでが、問題文の「3/5㎡のかべを1/3dLでぬれるペンキがあります。」を表現した面積図になります。
ここからが本題です。問題は、ペンキ1dLで何㎡ぬれるかということです(次の図は間違いですので、続きをしっかり見てください)。

ほとんどの子はわり算なので、上の図のように1㎡をさらに3等分します。そして、もととなる1㎡が15等分され、その内の9個分ぬれるから「9/15㎡」と答えを求めます。
これが、1/3dLのときの3/5㎡と何も変わっていないことがわかるでしょうか。では、何が間違いなのでしょうか。
この間違いのポイントは「1㎡をさらに3等分している」ということです。ここで考えるのは「1dLで何㎡ぬれるのか」であるため、1㎡を等分する意味はありません。
「わり算=等分する」という考え方があるため、何となく等分できる1㎡を3等分してしまいます。
では、どのように図(面積図)に書き表していけばよいのか考えていきましょう。この問題では、1dLを使ってぬるため、図(面積図)は1/3dLより大きくなります。それが、下の図です。

つまり、「1dLは1/3dLの3倍」になるので、「3/5㎡に3をかける」必要があります。
ここで「わり算なのに数が大きくなってもいいのか。」という疑問があるかもしれませんが、問題ありません。それは、5年生の「小数÷小数」で「わる数と商の大きさの関係」をすでに学んでいるからです。
わる数と商の大きさの関係
わる数>1 のとき、商<わられる数
わる数=1 のとき、商=わられる数
わる数<1 のとき、商>わられる数
商(わり算の答え)は、わる数が1より小さいとき、わられる数より大きくなります。そのため、わり算の商がわられる数より大きくなっても問題はないのです。この関係性が分からないときは、5年算数「小数÷小数」を復習する必要があります。
つまり、「3をかける」ということは、「1/3の逆数(3)をかけている」ということになります。これが、図(面積図)を用いた考え方です。
わり算の性質を使う
「分数÷分数」で「わる数の逆数をかける」ということは、わり算の性質を使っても考えることができます。
わり算の性質は、「わられる数とわる数に同じ数をかけても答えは同じ」というものです。ここでは、わる数を「1」にしたいため、逆数である「3」をかけます。以下のようになります。

最後わる数が1になると、その1は計算に関係がなくなります。そこで、わられる数を見ると、「3/5×3」となっていて、わる数の逆数をかけていることになります。
つまり、わり算の性質を使っても、「わる数の逆数をかける」ということを確かめることができます。
まとめ
6年算数「分数÷分数」の計算で、どうして「わる数の逆数をかける」のかわかったでしょうか。小学生であれば図(面積図)の方が、大人であればわり算の性質の方がわかりやすいかもしれません。どちらにせよ、どうしてそうなるのかをしっかり考えることが大切です。
算数のおもしろさは、ただ計算をして答えを正しく求めるのではなく、どうしてそうなるのかを考えることにあるはずです。この紹介した内容を一度見てもわからない人は、もう一度見て、どうして「分数÷分数」は「わる数の逆数をかけるのか」を考えて、算数のおもしろさを感じてほしいです。